2021年1月更新
個人事業から法人へ、そう考えるオーナーも多くいらっしゃるのではないでしょうか。弊社へのご相談も多く、法人成りを進めていくケースもあれば、時期をみてタイミングをみてと一旦保留するケースもあります。
一般的な意見や話も重要ですが、最も大切なのは今のサロンの状況です。ただ単に節税や融資に有利?などを理由に法人成りしてしまうと、致命傷を負う可能性も出てきます。
税理士さんが考えそうな観点で考えたり、社労士さんが考えそうな観点から考えたり、多方向から考えた上で判断する必要があります。数年後に良かったと思える選択はどちらなのか?そこをじっくり考察する必要がありますよね。
今回のブログは、独立を考えている美容師さんや、独立して数年経過している美容師さんにとって、知っておいて損はない内容だと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
美容室の法人化?
以前にも書きましたが、最近ブログを見ましたよ、見てますよ!という声を多くいただきます。反応があるって嬉しいですよね!少しでも誰かの目に止まり、何かの役に立っているのであれば書き続けていく意味がありますし、それを少しでも多くの方が見ていただけるように、積み重ねていくものですよね、ブログって。
先日、担当させて頂いているサロンさんにお邪魔した際、ちょうど法人成りをしようかどうか考えていて色々調べていたら千葉のブログが出てきて、今日来るって話だったんで相談したかったんです!と嬉しいお話。
ゆっくりお話させていただきました。これから法人成りをする方、何を基準にして法人にしますか?
会社にすればお金が貯まる?使える経費が増える?間違いではないですが、単純に正解とも言い難いところ。単純に売上や利益だけを見て、税理士さんや多くの方が言っているように、2年を目安で法人。なんてしてしまうと、将来大きなダメージを負ってしまうかもしれませんよ。
美容室法人化の大きな問題
法人成りを考えたときに、一番の壁はやはり社保ではないでしょうか。もちろん社会保険は悪いというわけでもありません。
新卒の採用や女性の多くの方は、社会保険を求めるかもしれませんし、私自身ないよりは有った方がいいとは思っています。ぶっちゃけ辞めれるのであれば辞めたいですがw
ここでの問題は社保の会社負担分が結構でかいってことです。ここの計算を怠ってしまうと、この先考えている事業展開などの計画に、支障をきたす可能性もあるんです。
皆さんご存知だとは思うんですが、人件費の約15%が社保の会社負担分です。個人事業の時は720万円の利益(事業所得)が有るとして、月収60万円ですよね。
仮にスタッフが2人いて、合計給料50万円だとすると、ざっくり毎月75,000円の社会保険料会社負担があるんですよね。年間で90万円の社会保険負担額ですよね。
そしてこれだけではないんです。オーナー自身も事業所得から役員報酬に変わるので社保加入しなければいけません。
役員報酬を50万円で設定すると社会保険料はざっくりスタッフと同じ75,000円、年間90万円です。オーナーと従業員の社会保険料、合わせて年間180万円です。
そこにオーナーの年収600万円を足すと、780万円です。
元々720万円の利益だったので、60万円の赤字確定という結果に、、、
同じ利益で従業員がいなかった場合
オーナー役員報酬を同じく50万円で設定すると、年収600万円、社保料90万円で690万円なので、ちょうどいい感じ。ちょうど貯金も出来ない感じですが、、、
都内や大阪などでは、美容国保を活用することによって社会保険料の会社負担額を大きく削減することもできるので、法人成りのハードルはぐぐっと下がるんです。
さらに業務委託サロンであれば、そもそも雇用ではないので社保の事は考えずに済みます。業務委託サロンが出店をハイペースでしていけるのは、こういった背景があるのも一つの要因です。
社会保険加入義務があるのは、役員や雇用スタッフのみと考えれば、社保をあまり気にせず法人成りを考えられるので、会社を設立しやすいですよね。なので、私自身も700〜800万くらいの利益が出たら、法人成りの一つの目安とお話をしていますが、状況によって変わってくるってことなんです。
ネットや周囲の意見ももちろん大切ですが、実際の状況を考え、今後どうしていきたいか?ここから先を考えた上での法人成りをおすすめします。
美容師さんが住宅購入を考えている場合
よく個人事業の場合、住宅ローンが組みにくいって聞きますよね。実際安定した収入のある雇用などに比べると、やはり組みにくい傾向にあるようです。でも私のお客さんの個人事業主さん、ガンガン家買ってるんですよねw
法人経営者が自宅を経費に〜なんてパターンもあり、税務的にはマイホームはいらない、賃貸で十分。といった考え方も否定できませんが、個人的には家が欲しいか欲しくないかでいいと思っています。ただし住宅購入を考えて法人に、なんて方がいたら一旦ストップです。購入計画が何年か先になってしまうかもしれません。
まず年収300万の会社員と、年収700万の事業主だったら、どっちにお金を貸したいですか?どっちがちゃんとお金を返してくれそうでしょうか?安定した収入は確かに魅力的ですが、やっぱり稼いでいる人にお金を貸したいですよね。
どっちも同じ年収だったら、会社員の方が住宅ローンを組みやすいとは思いますが。
新しく立ち上がった会社の社長、役員が、報酬として月額報酬があったとしたら、金融機関はお金を貸してくれるでしょうか?まだ決算も迎えていないような会社の人に、僕だったら怖くてお金は貸せませんw
なので、2期分の決算書が必要なんですよね。場合によっては1期分でも行けるとは思いますが。
もしかしたら家を買うかも?なんて状況だったら、法人成りはよく考えてからの方がいいかもしれませんね。何年か先に〜と考えているのであれば、先に法人を設立しておいたほうがいいかもしれませんし、それこそその状況に応じて考えていかなければいけないんですよね。
事業とプライベートは別物ではありますが、こういうケースの場合は連動して考えておかないといけません。
参考までに、代表の下道が美容師さんの住宅ローンについて過去記事がありました。だいぶ古い記事ですが。
2015.10.21:美容師さんの住宅ローンの組み方と考え方
2015.10.22:美容師さんのマイホーム計画
2015.10.23:美容師さん向け住宅ローン知識
2015.10.24:美容師さんの住宅ローン「特別編」
美容室出店が先?法人が先?
これももちろん状況に応じてですが。よく、借り入れを考えると法人の方が有利といいますが、ある意味その通りで、ある意味間違っています。
住宅ローンと同じように、新設法人だと逆に借りにくくなってしまう可能性があるんです。なおかつ、出店をするということは、ある程度のまとまった経費が作れますよね。すなわち、所得を減らすことができますよね。
そもそも法人を設立する理由が利益がでていて、できれば税金を減らしたい!というのであれば、借り入れも含めて少し先に伸ばすという手もありですよね。そして、スタッフを増員するはずです。給与や社保を考えると一気に経費が増えていく可能性があります。
なので、一般的に出店を考えているのであれば、出店後に法人成り。という順番の方がいいように思っています。
結果出店できず、半端ない税金を収めるって可能性もあるので、あくまで結果論でしかない部分もあるのですが、法人成りをした結果、サロン運営が厳しくて個人に戻すって事にでもなったら、従業員は納得してくれるのか?ってところです。。。
税理士さんは法人成りを推奨します
もちろん弊社がご紹介している方達や、一部の方はそうではなく、ちゃんとした方も多くいるのですが、ちゃんとしてない方も多くいるのが現状です。
なぜその状態で法人成りしたのか?なんてサロンも結構あったりするのが現状なんですよね。
確かに税務、税金の視点から考えると法人の方がメリットは大きい場合が多いです。しかし、そこに社保を加味するとどうか?消費税免税の期間は問題なくても、消費税課税事業になったら急にお金が足りず、借金を重ねていくオーナーもいらっしゃいます。厳しい状況ですよね。
なぜ税理士さんは法人成りをすすめるのか?簡単です、顧問料が単純に高くなるから。いや、まじですよw
全ての税理士さんがそうではないですと伝えておかないと誤解を招く可能性がありますが、実際にそうとしか思えないサロンもあるんです。
どう考えてもまだ早くないですか?という状態で、法人になっていたり、開業と同時に法人設立させられている方をみると、どうにかしてあげたい。。。という気持ちでいっぱいになります。
法人成りをする際、税務の面からと労務の面から、両方から考えないとひどい火傷を負う可能性があるので、私が法人成りの相談を受け、実際に動きそうな場合、必ず社会保険労務士さんにも同席していただいてるんですよね。
実際の会社経営者の悩みの部分で「社会保険料の負担がでかい」という声は決して少なくないのが現状です。
経営をし利益が出てから法人を設立する
当たり前のような流れですし、それを一つの目標にしている方もいるとは思いますが、タイミングや状況を誤ると、結果大きな損害を被る可能性もあるので、しっかりとした経営判断が必要ですよね。
少し残念なお話ですが、独立からお手伝いしていたサロンさんが、税理士や周りの意見で法人成りをしてしまいました。
社会保険料などを試算したところ、まだまだ売上、利益が足りていないという判断だったんですが、それ以上のメリット、社保に加入したいというスタッフの声を優先してしまったんでしょうね。
求人などの面では多少のメリットはあるとは思うのですが、実際のところは所得が大幅に減少してしまったんですよね。なんの為の法人成りなのか、しっかり考えていかないといけません。
2年で法人という考えは、ある意味王道かもしれませんが、社保が関わってくる今、スタンダードではないのかもしれません。間違っても消費税増税だから、免税事業ではなくなるから。といったタイミングで動かないようにしてくださいね!